第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「ふわふわした雰囲気とか、笑った顔がそっくり」
「……そう、かな」
ふわふわした雰囲気……。 褒められてる?
でも、お母さんと似てるって言われると、なんだか照れくさい。
「目元はお父さんに似てるかもね」
「お父さんに?」
「うん。少し垂れ目で、優しそうなところ。……でも、芯が強くてちょっと頑固そうなところとか、そのまんま」
「が、頑固って……」
せっかく感動して涙ぐんでいたのに、思わず涙が引っ込んでしまった。
「先生、私のこと……ふわふわとか頑固とか、そんなふうに思ってたんですか?」
「えー、褒めてるってば」
先生が拗ねる私の頭を撫でた、その時――
背後ですうっと襖が開く音がした。
「お茶、入ったわよー」
振り向くと、おばあちゃんがお盆を持って立っていた。
お盆の上には、冷たい麦茶とまるい大福が並んでいる。
「先生も律儀な人ねぇ」
おばあちゃんはにこにこと笑いながら、私たちのそばにお盆を置いた。
すると、先生はあぐらをかいて、へらっと愛想よく笑う。
「いやー、のご両親にはちゃんと挨拶しておかないとって思いまして」
「やだー、先生ったら。こっちまで恥ずかしくなっちゃう」
おばあちゃんは先生に麦茶の入ったグラスを渡しながら、続けた。
「もう、いつでもを連れて行ってもらって構わないわよ〜。あ、先生、日取りはいつにする?」
「お、おばあちゃん!?」
「明後日が、大安だから……」
「なんでそんな話になるのっ!」
私が慌てて声を上げると、おばあちゃんは楽しそうに肩を揺らした。
「あんたは、冗談通じないんだから」
「もー、やめてよ……」
私と先生は、たしかに恋人同士だ。
でも、そんなふうに“その先”のことを言われても、正直まだよくわからない。
それなのに。
少しだけ先生との未来を想像した途端、心臓がうるさくなった。
(そもそも……先生が、そこまで考えてるかなんてわからないのに)
私は隣に座る先生に向かって、小さく頭を下げた。
「すみません。先生、気にしないでくださいね」
すると、先生はあぐらをかいた膝に頬杖をついたまま、私から視線を逸らさずに、ぼそっと低く呟いた。