第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
なんて言えばいいんだろう。
大好きな人。
苦しい時も、泣いた時も、抱きしめてくれた人。
私が一人で立てなくなりそうな時、何度でも手を差し伸べてくれた人。
どれも本当なのに、どれだけ並べても足りない気がする。
隣を見ると、先生が私をじっと見つめていた。
大丈夫だよって。
僕もちゃんとここにいるって、そう言ってくれている気がした。
私はもう一度遺影に向き直って、深呼吸をひとつ。
「私の……一番、大切で大好きな人です。これからもずっと、隣にいたい人」
言い切った後、張りつめていた身体の力が少しだけ抜けた。
(……やっと、二人に言えた)
すると、震えていた右手を先生の手がそっと包む。
そのぬくもりに触れた途端、ようやくちゃんと伝えられたんだと思えた。
先生は繋いだ手を離さないまま、二人に向かって口を開いた。
「……初めまして。五条悟です」
和室に、先生の声が静かに響く。
遺影を見つめるその横顔は、いつになく真剣だった。
「あの日……を守ってくれて、生かしてくれて、ありがとうございます」
「二人が命懸けで繋いでくれたこの命は……これからは僕が、何があっても守り抜きます」
その言葉に、視界がじわりと滲む。
両親が亡くなったあの日から、私はずっと一人で止まっていた。
『生きていてごめんなさい』って、心のどこかでずっと泣いていた。
でも、今は違う。
先生は私の罪悪感ごと受け止めて、二人が守ってくれた命なんだと、言ってくれた。
「……せん、せ」
涙声で名前を呼ぶと、先生はふっと口元を緩めた。
「ま、こんな最強で顔のいい男がついてるんだから。二人も安心してるでしょ」
「……っ、またそういうこと言う」
いつもの自信満々な態度に、つい笑ってしまう。
でも、そんなふうに軽口を叩いてくれる先生に、何度も救われてきた。
お父さん、お母さん……
寂しいよ。今でも、すごく。
会いたいって何度も思う。
でもね。私、ちゃんと幸せになれてるよ。
そう心の中で呟いて、私は繋いだ手をきゅっと握り返した。
ふと、先生が遺影の中のお母さんと私の顔を見比べて、ぽつりと呟いた。
「は、お母さん似だね」
「え……?」