第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
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「? 今日は学校じゃなかったの?」
玄関のドアを開けるなり、おばあちゃんが目を丸くした。
手には、庭の手入れをしていたのか、軍手と小さなスコップが握られている。
そして、私のすぐ後ろに立つ高い影を見上げて、さらにぱちぱちと瞬きをした。
「あら……先生も。どうしたの、二人揃って」
夏合宿が終わって、数日後の任務帰り。
私たちはおばあちゃんの家を訪ねていた。
おばあちゃんが驚くのも無理はない。
でも、どうしても今日来たかったから。
「おばあちゃん、ごめんね。急に来ちゃって」
少しだけ緊張しながら、私は後ろに立つ先生と顔を見合わせる。
先生はいつものように飄々と笑ったりはしないで、静かに頷いてくれた。
その小さな合図に背中を押されるようにして、私はゆっくり口を開いた。
「……お父さんと、お母さんに。先生を、ちゃんと紹介したくて」
その言葉に、おばあちゃんは一瞬だけ固まった。
けれど、すぐに目元を緩めて、全部わかったみたいに微笑んでくれた。
「上がって。お茶、淹れるから。あ、おいしい大福もちょうどあるのよ」
「うん、ありがとう」
この前、先生がうちに泊まった日。
『僕も、の両親に挨拶したい』
そう言ってくれた先生を、あの日の私は拒絶してしまった。
踏み込まれるのが怖くて。
先生と一緒にいる自分を、両親に見られるのも怖かった。
一番奥にある和室に二人で向かう。
障子を開けると、かすかに線香の匂いがした。
部屋の奥の仏壇には、三つの遺影が並んでいる。
穏やかな顔でこちらを見つめるおじいちゃん。
それから、優しく微笑むお父さんとお母さん。
仏壇の前に正座をすると、先生も私の隣に腰を下ろした。
長い脚を少し窮屈そうにしながらも、きちんと姿勢を正している。
そして、かけていたサングラスを外した。
蒼く透き通る瞳が、真っ直ぐに遺影を見つめている。
「……お父さん、お母さん」
私は膝の上でぎゅっと両手を握りしめながら、二人に向かって語りかけた。
「あのね、今日……紹介したい人がいて、一緒に来たよ。私の、担任の先生で……」
そこまで言って、少しだけ言葉に詰まった。