第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「守るものがあるから弱くなるんじゃない。この幸せを絶対に手放さない、死んでも勝つって欲張った方が……もっとずっと強くなれる」
先生は俺に向かって、自信たっぷりにニカッと笑いかけた。
「ま、僕は元々最強なんだけどさ」
呆れるほどの、傲慢な自信。
でも、この人が言うと、それがただの事実として聞こえるからタチが悪い。
不意に、俺の頭に大きな手が乗せられた。
「……っ、何すか」
鬱陶しくて顔をしかめると、先生は俺の頭を無造作に撫で回した。
「恵も。いつか本当に好きな子ができたら、僕の言ってることがわかるよ」
「……」
「その時は、ちゃんと僕にも紹介してね。父親代わりとして、気になるからさ」
「余計なお世話です。触んな」
俺は鬱陶しいその手をバシッと払い除けた。
先生は「照れるなよー」と楽しそうに笑い声を上げる。
その時、が大きく手を振って俺たちを呼んだ。
「伏黒くん! 先生! スイカ食べましょー!」
先生はひらひらと手を振り返し、俺の肩をぽんと叩いた。
「ほら、恵も早くおいで」
そう言って、砂浜を駆けていく。
の隣まで行って、差し出されたスイカを受け取る姿が見えた。
小一の時に拾われてから、俺はずっとあの人を見てきた。
いつも飄々として、ふざけていて。
どれだけ周りに人がいても、本当の意味では誰も寄せつけないような、そんな距離のある人だった。
それが今は、ただの男の顔をして、一人の女の子のそばに立っている。
そんな顔をするんだな、と。
少しだけ意外で、少しだけ羨ましかった。
「伏黒ー! 早く来ねーとスイカ全部食っちゃうぞ!」
「もたもたしてないで早く来なさいよ、このスカし野郎!」
「伏黒くん、早く早くー!」
虎杖と野薔薇の馬鹿でかい声に混じって、の明るい笑い声が響く。
見れば、先輩たちもスイカを持って、こっちへ手を振っていた。
(……悪くないのかもな)
気づけば、口元がほんの少しだけ緩んでいた。
俺はそれを隠すように、何でもない顔をして騒がしい輪の中へ足を向けた。