第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
その横顔を見ていると、ずっと心のどこかに引っかかっていた疑問をぶつけてみたくなった。
「五条先生……」
「んー?」
「俺には、よくわかりません。いつ死ぬかわからない呪術師が……友達や、ましてや恋人を作る意味が」
それは、この呪術界で生きるなら、誰もが直面する現実だ。
深い関わりを持てば持つほど、いざという時の絶望は深くなる。
常に死線に立つ呪術師なら、なおさら弱点になり得るはずだ。
先生はしばらくの間何も答えなかったが、不意に口を開いた。
「恵、この世界で誰かと誰かが出会う確率は180億分の1って知ってる?」
「……は?」
突然の突拍子もない言葉に、思わず隣を見上げた。
「僕も硝子に教わったんだけど。とんでもなく奇跡的な数字だよね」
「……だから、なんなんですか、いきなり」
「まだピンときてないねぇ。わかりやすく言うと――」
先生はそこで、わざとらしく間を置いてから、にやっと笑った。
「恵が明日、ウサ耳つけて『先生だぁいすき♡』って抱きついてくるくらいあり得ないかな」
「……気持ち悪い例え出さないでください。その確率は、天地がひっくり返ってもゼロです」
俺が心底嫌そうな顔で即答すると、先生は「えー、残念」と肩をすくめた。
(……やっぱり、この人に聞いた俺がバカだった)
どうせまた、適当な答えしか返ってこないと思って。
「もう、いいで――」
そう切り上げかけて、ふと気づく。
先生の顔に、いつもの軽薄な笑みがないことに。
「だから、出会うだけでそれだけあり得ない確率なら。友達になったり、さらに誰かを好きになるなんて……もっとすごいことでしょ」
先生は、ゆっくりと顔を砂浜に向けた。
視線の先では、虎杖がスイカ割りを成功させて歓声が上がっている。
「恵、前にも言ったけど、死ぬ時は一人だ。でもさ、死ぬまで一人は寂しいよ」
「どうせ最後は一人なら、そんな奇跡みたいな確率で出会えた人と一緒に生きて、明日もまた一緒に笑いたいって思えたら――それって、最高に幸せじゃない?」