第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「あ、これ幼稚園のお遊戯会かしらね。、木の役だったのよ」
「木の役!? ぷっ……あははははっ! 、顔ガチガチじゃん!」
おばあちゃんまでノリノリで解説を始め、二人の笑い声が和室に響き渡る。
大好きな人に自分の昔の恥ずかしい写真を見られるなんて、公開処刑でしかない。
おばあちゃんは「懐かしいわねぇ」と目を細めながら、アルバムをさらに前のページへと戻していった。
「あ、これはが生まれたばっかりの時ね。気仙沼の病院で撮ったやつ」
おばあちゃんが指差したページには、色褪せた数枚の写真が並んでいた。
白い産着に包まれた、本当に小さなシワシワの赤ちゃん。
ベッドの上で私を抱きながら優しく微笑むお母さんと、隣で嬉しそうに寄り添うお父さん。
そして、その横で今より少しだけ若いおばあちゃんが、ピースサインをして写っている。
「へぇ……。みんな、すっごくいい顔してるね」
先生も、さっきまでのからかうような口調を潜めて。
写真の中の幸せそうな家族の姿を、しみじみと見つめた。
(……ほんとだ)
私が生まれた日。
みんながこんなふうに笑って、私を迎えてくれていたんだ。
じんわりと、あたたかいものが胸いっぱいに広がっていく。
「ほんと、この時はみんなお祭り騒ぎでねぇ。がなかなか出てこなくて、お医者さんも看護師さんもバタバタして——」
おばあちゃんが懐かしそうに話し続けていた、その時だった。
ページをめくろうとしていた先生の指が、ぴたりと止まる。
「……先生?」
不思議に思って、そっと顔を覗き込む。
でも、返事はない。
さっきまで笑っていた口元から、すっと表情が消えていた。
おばあちゃんの明るい声だけが、変わらず和室に響いている。
なのに。
先生のまわりだけ、急に空気が変わってしまったみたいだった。
細められた蒼い瞳が、ページの一番下にある一枚の写真を、じっと見据えている。
その目にあるのは、驚きでも戸惑いでもない。
もっと鋭くて、冷たいものだった。
♦︎第24章 了♦︎