第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
(……はぁ?)
いつものこいつなら、どんな深刻な事態だろうが「僕、最強だから」と笑って片付けるくせに。
生徒の指導だって、飄々とした態度で底意地悪く正論をぶつけたり、無理難題を押し付けるのが『五条悟』という男だ。
それが、なんだよ。
「自分がやると感情が入って甘やかしてしまうから、代わりにやってくれ」だと?
でも、それだけのことは特別ってこと……なのか。
「……ちっ。私を都合のいい悪者にする気かよ」
私が睨むと、悟は悪びれもせずに笑った。
「えー? だって真希、そういうの得意でしょ」
「あ?」
「痛いとこ突いて、相手泣かせるの」
「ぶっ殺すぞ」
悟はへらっと笑ったまま、少しだけ声を落とした。
「それだけで頼んでるわけじゃないよ」
「真希ならが置かれてる立場も、理解してると思ってね」
一瞬、言葉に詰まる。
いつもの軽口のままなのに、そこだけ妙に本気に聞こえた。
私は深いため息をついて、腕を組んで壁に背中を預けた。
「……まぁ、あいつがウジウジしてんのは私も見てて苛ついてたところだ。お前に言われるまでもなく、キッチリしごいてやるよ」
「さっすが、真希! 憂太を泣かしただけあるね」
さっきまでの真面目な空気はどこへ行ったんだ。
いつも通りの悟に、一気に苛立ちが湧いてくる。
「じゃ、よろしく」
悟は軽く手を振って、その場から立ち去った。
「……ってわけだよ」
真希さんはそう言って、持っていたペットボトルの水を飲みほした。
「……で、何したんですか」
俺が尋ねると、真希さんは空になったペットボトルを弄りながら、ふっと息をついた。
「打ち合いに付き合わせた」
「……に、真希さんと打ち合いなんて無茶でしょ」
「ああ、案の定ボロボロだったな。でも、あいつの致命的な欠点がよく分かった」
「だから、その半端な覚悟じゃ死ぬぞって、強めに脅してやったんだよ」
(……それで、はあんなに落ち込んでたのか)
合宿二日目の朝。
ひどく思い詰めた顔をして朝飯の席に現れたあいつの姿が、やっと腑に落ちた。