第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
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「……ぐぇっ」
腹に重い一撃を食らって、強制的に意識が浮上した。
(……またかよ)
暗闇の中で目を開ける。
隣で寝ている虎杖の踵が、俺の腹にクリーンヒットしていた。
少し離れた布団では、パンダ先輩の巨大ないびきが響いている。
合宿に来てから連日、俺は深刻な寝不足に陥っていた。
(……もう寝れる気がしねぇ)
ため息をついて、布団から抜け出す。
少し冷たい空気を吸いたくて、ふらふらとテラスへと向かった。
ガラス戸を開けて、外に出ると。
(……あ?)
朝焼けの砂浜。
そこに、見慣れた二つのシルエットがあった。
五条先生と、だ。
(こんな朝はやくから何やってんだ、あの人たち……)
まだ誰も起きていない海辺。
二人はしっかりと手を繋いで、朝日に向かって並んで立っていた。
少しだけ距離が近くて。
先生が、の頬に優しく触れているのが見える。
あの二人がそういう関係なのは、前から知っていたけど。
朝っぱらから堂々と見せつけられると、寝不足の頭にはさすがに少し胃がもたれる。
(誰かに見られたらどうするつもりなんだよ)
そう思ったその時。
「恵、早いな」
不意に、背後から声をかけられた。
振り返ると、寝癖のついた真希さんが欠伸をしながら立っていた。
(まずい)
さすがにあれを見たら、二人の関係がバレるんじゃねーか。
咄嗟に一歩横へずれて、砂浜が見えないように真希さんの前へ立つ。
けど、もう遅かった。
真希さんの視線は、俺の肩越しに砂浜の二人をとっくに捉えていた。
「真希さん……あれは」
だが、俺が答えるより早く、真希さんは呆れたように、ふっと鼻を鳴らす。
「……いい大人が、朝っぱらからはしゃぎやがって」
「え」
俺は、思わず真希さんの顔を二度見した。
「真希さん……あの二人の関係、知ってたんですか?」
「は? 気づかねー方がどうかしてるだろ」
真希さんはテラスの手すりに寄りかかりながら、続けた。
「あの馬鹿目隠しが、を見る目。……完全にベタ惚れじゃねーか」
(……まあ、確かに)