第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「そ、そうです……っ。だから私にはちょっと、派手というか……」
「そんなことないよ。似合ってる」
先生の指が私の腰で結ばれた細い紐に、つんと触れた。
「……あの時は我慢したけど。今は二人きりだし、解いてもいいでしょ?」
「だ、だめに決まってますっ!!」
慌てて腰の紐を押さえて、先生をじとっと睨む。
でも、先生は全然悪びれる様子もなく、楽しそうにくすくす笑っていた。
「また、舐めてあげるね」
その言葉に、一瞬だけ思考が止まる。
でも、先生の意地悪な目がどこを見てるのか気づいた途端、顔が一気に熱くなった。
昨夜、あそこに唇を押しつけられて。
熱い吐息も、ぴちゃぴちゃと響く水っぽい音も。
先生の白い髪が視界の端で揺れていたことまで、鮮明に思い出してしまう。
「ばか! へんたいっ! なんでそういうこと平気で言うんですかっ」
「えー? でも、だって喜んでたじゃん」
「~~っ!」
何か言い返したいけど、言葉にならなくて口をぱくぱくさせてしまう。
先生はそんな私を見て、くすっと笑った。
「……行こっか」
そう言って、私の手を引いて波打ち際に向かう。
寄せては返す波の音が、だんだん大きくなる。
足元まで水が迫ってきた瞬間、無意識のうちに足が止まってしまった。
半歩先を歩いていた先生が、 振り返って私を覗き込む。
「まだ、怖い?」
怖くないって言ったら、嘘になるけど。
でも。
もう前みたいに、足がすくんで動けなくなるわけじゃない。
私の手を引いてくれる、この人がいるから。
「……ちょっとだけ」
小さく笑って、正直に答えた。
それから、繋いでいる先生の大きな手を、ぎゅっと握り返す。
(大丈夫)
すぅっと、海の空気を吸い込んで。
自分から一歩、水の中へ足を踏み出した。
ざぶんと足の甲を水が覆う。
「……冷たっ!」
数年ぶりに入った海。
まだ太陽が昇りきっていないせいか、水は少しだけひんやりとしていた。
足の裏で細かい砂がさらさらと崩れていく感触。
寄せては返す、優しい波の揺れ。
(きもちいい……)
ふっと頭の中に、幼い頃の記憶が蘇った。