第21章 「可惜夜に眠る 前編」
「ピーッ!!」
審判台から、笛の音が鳴り響いた。
先生がどこから出したのか、ハンドマイクを持って高らかに宣言する。
「現在のスコア、2対0! 1年チーム、肉とメロンへ一歩リード!」
「っしゃあ!! 見たかオラァ!!」
野薔薇ちゃんがガッツポーズを決める。
すると、虎杖くんが満面の笑みで私の方へ駆け寄ってきた。
「もナイストス!」
「えっ?」
虎杖くんが、手のひらを目の前に差し出してくる。
そのキラキラした笑顔につられて、私もおずおずと右手を上げた。
パァンッ!!
「いっ……!」
ハイタッチのいい音が鳴ったのと同時に、掌がジンジンと痺れる。
虎杖くん、手加減なしだ……!
でも、痛さよりも嬉しさの方が勝った。
(私でも……役に立てた?)
虎杖くんに「ナイス」って言ってもらえた。
それが嬉しくて、私は痺れる手を握りしめながら、えへへと笑った。
「あ、ありがとう……!」
「おう! この調子でガンガンいこうぜ!」
虎杖くんはニカッと笑って、ポジションに戻っていく。
伏黒くんも、小さくだけど「ナイス」と声をかけてくれた。
たったワンプレー参加しただけなのに、心臓がバクバク言ってる。
恐怖と緊張で、寿命が3年くらい縮んだ気がするけど……でも、楽しいかも。
(……でも、まだ2点?)
(バレーって、1セット25点だよね……?)
ふとスコアボードを見て、気が遠くなるような事実に気づく。
目の前がクラクラした。
「ほら、次だ次! 構えろー!」
「は、はいぃ……っ」
虎杖くんの声に、私は重い体を無理やり起こす。
地獄のバレーは、まだ始まったばかりだった。