第21章 「可惜夜に眠る 前編」
それから、試合は熱戦にもつれ込んだ。
お互いに1セットずつ取り合い、現在は3セット目。
点数は24対24。
どちらかが2点先取したら勝ちだ。
「チャンスボール! 釘崎、頼む!」
「任せなさい!」
虎杖くんが拾ったボールが、ネット際へ上がる。
野薔薇ちゃんが助走をつけて跳び上がった――その時だった。
「――っ!?」
足元の砂に足を取られ、野薔薇ちゃんの体勢が大きく崩れた。
スパイクを打とうとした腕が空を切り、身体がネットの支柱の方へと流れる。
「あぶなっ――!」
誰かの叫び声。
野薔薇ちゃんは空中で体勢を直そうともがくけれど、慣性で身体は止まらない。
このままじゃ、野薔薇ちゃんが――!
(――ダメっ!)
思考よりも先に、身体が勝手に動いていた。
「野薔薇ちゃんっ!!」
私は、野薔薇ちゃんとポールの間へ滑り込むように身体を投げ出した。
怖いとか、痛そうとか、そんなことは一瞬も考えなかった。
ただ、野薔薇ちゃんに傷がつくのだけは嫌だった。
ドガッ!!
鈍く、重い衝撃が私の肩と背中を貫いた。
「きゃぁっ!?」
野薔薇ちゃんが私の上に覆いかぶさるようにして倒れ込む。
「――ッ、う……」
痛みに、視界が一瞬白く飛ぶ。
けれど、私の目は宙に浮いたボールを追っていた。
まだ、落ちてない。
私が身体で受け止めた衝撃で、ボールが偶然にも相手コートへ弾かれていた。
ボトッ。
「あ」
虚を突かれたパンダ先輩が反応できず、ボールは砂の上に落ちた。
「……え、入った?」
25点目。
「やった……点数、入った……!」
私が笑うと、目の前の野薔薇ちゃんが真っ青な顔をして私を睨みつけた。