第18章 「血と花の話をしましょう**」
「クリックしても開かないっすね」
画面の中央に、ポップアップが浮かんでいた。
【この部屋には、“選ばれたお客様”だけが入室できます。】
※招待コードをお持ちでない方はアクセスできません
「……招待コード……?」
新田さんが奥さんの方に振り返り、尋ねた。
「ご主人からこのサイトの話、聞いたことはないっすか?」
奥さんは目を大きく見開き、次いで首を横に振った。
「いえ。……今、初めて知りました……」
「そうっすか……今の段階では、コードがないと中は見られないっすね」
新田さんの声が少し落ちる。
モニターに視線を戻しながら、呟くように続けた。
「ただ、ご主人がここで何かを買っていたのは、間違いないっす」
(招待コード……ってことは、サイトの管理人から? それとも、知り合い経由……?)
視線を画面から外し、机の上に置かれたスマホやメモ帳に目をやる。
(もし……何かやりとりしてたなら)
(メールとか、どこかにヒントが残ってたり……)
「メールとか……フォルダの中に何か残ってるかもしれません」
私がそう口にすると、新田さんがうなずいた。
「可能性はあるっすね」
そして、新田さんが奥さんの方へ向き直った。
「……申し訳ないっすが、ご主人のスマホやパソコンの一部のデータ、それと関連しそうな私物を少しだけ、お預かりしてもいいっすか?」
「調べ終わったら、すぐにお返しするっす」
奥さんは一瞬だけ目を伏せてから、静かに頷いた。
「……はい。構いません。よろしくお願いします」
「ありがとうございますっす」
新田さんは深く頭を下げ、パソコンやスマホを丁寧に専用の保護袋に収めていく。
私も机の引き出しからUSBメモリや小さなメモ帳を見つけ、段ボールの中へと一つひとつまとめていった。