第18章 「血と花の話をしましょう**」
そこには、通販サイトの購入履歴ページが開かれていた。
Re:bloom
白い文字でブランドのロゴが浮かび、
背景には、花びらのような意匠がうっすらとあしらわれている。
「……リ・ブルーム……?」
私は画面に表示されたロゴを読み上げた。
新田さんが画面を操作しながら呟く。
「アロマとか、化粧品とか……そういうナチュラル系の通販サイトっすね」
「このサイトでの買い物が、ここ最近は一番多いです」
トップページには“植物の力で再生を”というキャッチコピー。
写真にはドライフラワー、ボタニカルオイル、リラクゼーショングッズ。
どこをどう見ても、女性向けのライフスタイルブランドにしか見えなかった。
「これの、どこが……おかしいんですか?」
そう尋ねると、新田さんはマウスを持ったまま、ほんの少し肩をすくめた。
「いや、決めつけるわけじゃないっすけど……こういうの、男の人が頻繁に買うのって、ちょっと珍しいなって」
確かに。
部屋にその手のものが置いてある気配もないし。
奥さんへのプレゼント……?
でも、それなら隠す必要なんてあったのかな。
「で、ちょっと気になって……詳しく見てたら……」
新田さんがスクロールを止める。
そこには、他の文字よりも少し色味の薄いリンクがひとつだけ並んでいた。
”終わらない苦しみを、還したい方へ”
「これって……」
思わず声が漏れる。
ありふれたナチュラル系の通販サイトにしては、あまりにも異質な文言。
でも、追い込まれた人の目には救いの言葉に見えてしまうかもしれない。
(……“還す”)
その言葉にひどく引っかかる。
花冠の魔導と、同じだ。
苦しむ魂を“送り出す”力。
悠蓮の記録に残されていた古い和歌には、それを「還す」と書いてあった。
(偶然……じゃない、よね)
そのとき、新田さんが小さく声を上げた。