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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第18章 「血と花の話をしましょう**」


(すごい本の数。本が好きだったのかな)

(特に……変わったものはなさそう)

 
そう思いかけたとき、ふと枕元に置かれた一冊が目に入った。
付箋が何枚も挟まれていて、とても読み込まれている雰囲気だった。
私は手に取り、表紙を見ると、



「死の克服 ――再生医療の最前線」 著者 須和清仁


(あ、これ最近話題になってる本だ)

(この人……確か、再生医療の第一人者って言われてる人だっけ)


奥さんが、私の手元に気づいた。

 

「ああ、それ……主人、最近よく読んでいたんです」

「本だけじゃなくて……須和さんの講演の動画をも見るほどで……」

「この人の研究がもっと早く進んでいたら……主人も治療できたかもしれないわね」



そこまで言って、奥さんはふと言葉を切る。
少し間をあけて、絞り出すように続けた。



「それより……もっと早く、病院に連れていってたら……彼は助かったのかしら……」

「あのとき、“大したことない”って、言う彼を無理やり……」

 

奥さんは、俯いたまま目元をそっと指で押さえた。


私は何も言えずに、その姿を見つめることしかできなかった。
その問いの答えは、誰も教えてくれないことを知っているから。


(どうしてあのとき、って)

(こうしていたら、ああしていたらって)


だって、死はいつも突然で。
理不尽で。
努力だとか、覚悟だとか、
そんな言葉をあざ笑うみたいに奪っていく。
避けようとしても避けられないもの。


世界はいつだって、当たり前みたいな顔で死を並べてくる。
私たちはそれを抱えて、生きていくしかなくて。


(……あの日もそうだった)


潮の匂い。
耳を裂くような波の音。
打ちつける冬の風の冷たさ。
道路の上に落ちていたランドセル。



『、先に避難所へ行きなさい』

『お母さんは、お父さんの様子を見てくるから――』



最後に聞いた、母の声。


“もし”をいくつ並べても、亡くなった人は戻ってはこない。
それでも、残された人は――


答えのない永遠の問いを、繰り返してしまう。 









「さん、これ見てくださいっす」

 

その声に我に返って振り向くと、新田さんがパソコンの画面を指で示していた。
画面を覗き込んだ瞬間、私は思わず息をのんだ。
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