第17章 「花は蒼に濡れる**」
見てはいけないものを覗き込んだような罪悪感。
なのに、それでも心のどこかで……期待している自分がいた。
(やだ……私、なに考えて……)
知らない感覚だった。
太ももの奥がじんと熱くて、胸がそわそわして。
身体のどこかが自分じゃないみたい。
怖い。でも、知りたい。
逃げたいのに、なぜか動けない。
そんなはじめての――
わたしの中で芽生えた、うまく名前のつけられない感情。
固まっていると、先生がこちらへ目を向けた。
その視線にびくっと肩が揺れる。
「そんなに見つめられたら、緊張するんだけどな……僕でも」
冗談めいた声。
なのに、熱が滲んでいるのがわかる。
「……っ、見て、ない……ですっ」
とっさに返した声は、うまく唇からこぼれなかった。
見てないなんて、そんなの……自分が一番わかってるのに。
先生は袋を破ると、慣れた手つきで中身を取り出し、
ほんの少しだけ背を向けてそれを装着した。
視線を逸らしたいのに、逸らせなかった。
指先のひとつひとつの動きまで、息を呑んで見つめてしまう。
ベッドがきしっと揺れる。
先生がゆっくりとわたしの方へ近づき、大きな手が私の頬に触れた。
あたたかくて、安心するのに……なぜか泣きたくなる。
「……好きだよ、」
優しい声が耳元で落ちる。
そして、額と額がふれる距離まで近づいたかと思うと――
先生は私の唇にそっとキスを落とした。
視線が絡まり、何も言わずとも心が読まれているようだった。
膝の裏に手が添えられ、ゆっくりと脚が開かされていく。
骨盤が自然と傾き、腰がベッドに深く沈んだ。
体が勝手に受け入れる体勢になっていくのが、
恥ずかしくて、怖くて――
どうしていいかわからなくなる。
そんな私の上に、先生の体が覆いかぶさってきた。
「、入れるよ」
そう言われた直後、先生のものが入口に触れた。
あの京都の夜と同じ感触。
熱くて、硬くて、脈打っていて……
それが、確かに私の中へと入り込んでくる。
(……っ)
びくっと体がこわばった。
狭いところを先生のものが無理やり広げるように進んでくるたび、知らない感覚で満たされていく。