第17章 「花は蒼に濡れる**」
(……先生の裸……)
自分とは違う。
骨格も、筋肉のつき方も全て。
(……わたし、本当に……これから先生と)
そう思った瞬間、胸がきゅうっと締めつけられた。
嬉しいのか、怖いのか、恥ずかしいのか。
どれか一つじゃなくて、全部がぐるぐると混ざり合って息ができなくなる。
ふと、先生の手が動いた。
ベッドの横、サイドテーブルの引き出しへ無造作に指を伸ばす姿があった。
カチャ、と小さな音がして、金属のつまみが動く。
(……なにか、取り出すの?)
視線を逸らしたいのに、逸らせなかった。
先生の白い指がその奥を探るように動いている。
そして、小さな四角いパッケージをひとつ取り出した。
(……あれって……)
はじめて見るそれは、思っていたよりも小さくて。
でも、やけに現実的で。
( そ、そうだよね……必要、だもんね)
あたりまえのこと。
でも、ちゃんと「するんだ」ってことを、今さら突きつけられたようで――
無意識に視線が先生の手元を追ってしまう。
「……え、なに? そんなに興味あるの?」
ふと顔を上げた先生が、いたずらっぽく微笑んだ。
「ち、ちが……! あの……」
とっさに否定しようとした言葉は、うまく口にできなかった。
「顔、真っ赤だよ?」
そう言われて、たまらず顔を逸らす。
でも。
(……だって、気になって……)
そっと横目だけでちらっと先生の方を見る。
視線の先で、先生は落ち着いた手つきで自分の腰元へと手をやっていた。
ベルトの金具の外れる小さな音。
それが静かな部屋に響いただけで、心臓がひとつ大きく跳ねた。
先生の手がズボンのチャックに指がかかる。
ズボンが腰から滑り落ち、脚のラインが照明の中で浮かび上がる。
下着の奥にあるものの輪郭が、布越しにでもわかってしまって。
自分とは違う身体に息を呑んだ。
( 先生の……)
きっと、ふつうのこと。
男の人なら当たり前のことなんだって……わかってるのに。
(……おっきい……)
(ほんとに、これが……入るの……?)