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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」


***


「ったく、硝子のやつ……!」



先生がぼやくように言いながら、持ってきた紙袋の包みを開ける。



「が目を覚ましたって、なんで僕に言わないかなあ?」



(……あれ? 硝子さん、先生に伝えるって言ってたような……?)

 

一瞬だけそんなことが頭をよぎったけれど、
包みの中から現れた和菓子が目に入って、自然と表情がゆるむ。



「……あ、これって」



私が首を傾げると、先生はふふんと得意げに鼻を鳴らした。



「伊勢名物 赤福。出張ついでに買ってきた」



そう言いながら、一つ私に差し出してくれる。
それを受け取ると、甘いあんこの香りがほんのりと漂ってくる。

 

「……いただきます」

 

ぱくりと一口。
なめらかなこし餡と、もっちりとしたお餅が舌の上でとろける。



「……おいしい。甘いもの、久しぶりです」

「でしょ~? あ、そこのテーブルに置いてあるのも全部食べていいからね」



先生はそう言いながら、自分もひとつ頬張る。
私は、ベッドサイドの箱の山に目をやった。



「……これ、やっぱり先生が?」

「うん。北から南まで、日本全国の甘いものが楽しめるよ」

「……ふふっ」



思わず笑ってしまった。
全部甘いものなところも、先生らしい。

 
赤福をもう一口食べようとしたとき、

 

「……それより」

 

その声に、私は顔を上げる。

 

「“送った”んだね」

 

先生の瞳がまっすぐこちらを見つめていた。
さっきまでと同じ優しさをたたえたまま、
でも、そこに確かな真剣さが宿っている。



「現場に着いたとき、呪霊の気配はもうなかった。けど……白く光る花が、いくつか残っててさ」

 

先生はふと視線を落として、思い出すようにゆっくりと続けた。


 
「あの光……不思議だった。
祓ったあとって、もっとこう、荒れてるもんなんだけどね」

「それがさ。あったかくて、きれいで――見てると、不思議と安心するような。……そのもの、って感じ」


先生のその言葉に、私はふと目を伏せた。
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