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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」


(……見えなくなってる!)


誰の記憶も、感情も流れ込んでこない。
その事実がただただ嬉しくて。
安心して、涙が出そうになる。

 
私はそっと目を閉じて、先生の胸に顔を埋めた。
聞こえる。
どくん、どくん、と先生の心臓の音がする。
私の鼓動と重なって、溶け合っていく。


(……よかった、本当によかった……)


じんわりと胸の奥があたたかくなっていく。


その時、耳元で静かに声がした。

 

「……、積極的なのは嬉しいんだけど、どうしたの?」

 

先生の声はどこか困ってるような、でも少し笑ってるような響きだった。


(……あっ)

 
その瞬間、私はようやく“自分が何をしていたのか”を思い出した。


さっきまで、あちこち先生の体を触って。
確認するように撫でて、自分から抱きしめて――

 

「~~~~っ!!」

 

自分の顔が信じられないほど熱くなっていくのを感じた。



「あ、あの、これはですね……そのっ……!!」



しどろもどろに言葉を探すけれど、うまく出てこない。
もうどうしたらいいのかわからなくなって、ぱっと先生から離れようとした。



「え、まだだめ。もうちょっと」



そう言って、私をさらに抱き寄せてきた。



「僕もぎゅってしたい」



……ずるい。
そんな言い方されたら、もう抵抗なんてできなくなる。


私は観念してそっと目を伏せた。
そして、おとなしく先生の腕の中に身を預けた。


(……幸せって、こういうことを言うのかな)


夏の朝の光が、カーテン越しにやわらかく降り注いでいた。
廊下の向こうでは、看護師さんの足音が遠くで響いている。


世界は少しずつ目を覚ましているのに、
私たちだけは――まだ、夢の中にいるみたいだった。
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