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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」


「あ……ごめん」



先生がふと我に返ったように目を逸らし、そっと私から離れようとする。


(……あれ?)


その時、奇妙な違和感が胸をかすめた。


(今……見えなかった)


先生に触れていたはずなのに、
あの時みたいに、“記憶”が流れてこなかった。


(……そういえば)


思い返す。


硝子さんが手を握ってくれたときも、
看護師さんが体を拭いてくれたときも。


(……誰の記憶も、見えなかった)


そして今。
先生の手に、背中に、あんなにも強く抱きしめられていたのに――
それでも、何も入ってこなかった。


そっと手を伸ばして、先生の胸元に触れてみた。
服越しに、肩から腕へと指先をすべらせるように撫でる。


(……やっぱり、見えない)


今度は先生の手を取った。
両手で包み込むように握ってみる。
その大きな手に、そっと自分の頬を押しあてた。


それでも、何も流れてこない。


(……私の中に入ってこない)


なんだか不思議で、嬉しくて。
今度はおそるおそる、先生の腕に手のひらをのせる。
さらに、腰や太もも、足首のあたりまで――

まるで空港のセキュリティチェックのように、ぺたぺたと触って確認する。



「……え? な、なに?」



先生が困惑したように声を上げる。
意味がわからず、目をしばたたかせて立ち尽くしていた。


それでも私は構わず、さらに一歩近づいた。
思いきり、先生の背中に腕を回して――


ぎゅっと、強く抱きしめる。

 

「……っ!?」

 

先生の肩が、わずかにびくりと揺れた。
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