第12章 「極蓮の魔女」
「……破れてる」
めくられた隣のページは、中央からざっくりと裂かれ、内容のほとんどが失われていた。
「誰かが、意図的に破ったみたいだな」
そう言って、先生は破れた断面をそっとなぞる。
よく見ると、そこには何かを書きかけたような痕跡がうっすらと残っていた。
「“花冠”の詠みとは別に……まだ“何か”が記されてたっぽいけど……」
冊子の中を確かめるように、もう一度ぱらぱらとページを繰っていく。
先生がめくった最後の一葉――
そこには、わずかに墨が滲んだ筆文字が記されていた。
『この記録は 第八代 五条家当主 五条 靖厳 により編纂されしものなり』
「……五条……せい……げん?」
その名前をそっと読み上げると、先生の表情に一瞬だけ影がさした。
「本当に……“悠蓮”の記録が、うちから出てくるなんてね」
先生は小さく息を吐きながら冊子を閉じながら、ふと眉をひそめた。
「……にしては、腑に落ちないことが多すぎる」
「腑に落ちない?」
「もし、この記録が正しいなら。悠蓮の力って、もっと普通に評価されててもよくない?」
「……確かに、そうですね」
先生は破かれた頁に目を落としたまま、続ける。
「呪霊も祓えるんだよ? 呪術師不足の呪術界では重宝されそうだけどな」
「……破かれたところに、理由が書かれてたんでしょうか?」
問いかけながら、自分でも理由のわからない不安が胸をよぎった。