第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」
「いや、なんとなく。空気がふわって揺れてたからさ。君の力、草花に反応しやすいでしょ?」
「さすがに“視える”わけじゃないけど、空間の揺れ方が……ちょっと異質だったから」
私は、思わず自分の手のひらを見つめた。
指から何かが出ているわけじゃない。
だけど、たしかに――何かが“起きていた”。
(……やっぱり、私の中の力って……)
そのとき。
「――あ、そうそう。これ」
先生が片手に提げていた紙袋を、ひょいと持ち上げた。
「仙台名物、喜久福~。出張のお土産」
にこりと笑って、袋を私に差し出す。
「僕のおすすめは、ずんだ生クリーム味。一緒に食べよ?」
その言葉に、思わず小さく笑ってしまった。
嬉しかった。
不安だった気持ちも。
胸のざわつきも。
その一言でふっとやわらいでいく。
「……はい」
たったそれだけのやりとりなのに。
胸の奥が、じんわりあたたかくなる。
“先生と一緒に”――
ただそれだけで、こんなにも安心するなんて。
先生がベンチに腰を下ろし、私もその隣に座った。