第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」
手渡された紙袋の中には、丸い小さな大福がいくつか。
手に取り、口に含むと。
ずんだの粒感と、生クリームのやさしい甘さが口いっぱいに広がった。
「……おいしい」
「でしょ? 最強の組み合わせなんだから」
そう言いながら、先生もひとつ手に取って包みを開ける。
ぱくっと口に運ぶと、ほんの一瞬だけ、目元がゆるんだ気がした。
「……んー、やっぱコレだよね」
嬉しそうな声。
なんてことのない表情なのに、その食べ方がなんだか可愛くて――
私は、つい見とれてしまった。
(……先生、こういうとき、ちょっと子どもっぽい)
だけどそれが、すごく好きだった。
肩の力が抜けるような、ほんの小さな時間。
だけど、こんな時間がいまの私にはとても大きかった。
「そういえばさ」
不意に先生が口を開く。
「さっき……スマホ、見てたでしょ」
「っ……!」
ぎこちなく顔をそむけた。
「……う、うん。見てましたけど……」
「んー、なんか文字打とうとしてたように見えたんだよね。何調べてたの?」
そ、そこまで見られてたとは……
初えっちについて調べてましたなんて、言えるわけない。
「て、天気ですかねっ……!」
「天気、ねぇ。……”はつ”、で始まるの?」
「~~~!!」
顔から火が出そうだった。
「み、見たんですか!?」
思わず声が裏返ってしまう。
睨むように先生を見ると――
「いやいや、見るつもりなかったけどさ。、近づいても全然気づかないんだもん。画面まる見えだったよ」
先生は、悪びれもせず肩をすくめた。
口元には、いたずらっぽい笑み。
……やっぱり、バッチリ見られてたっぽい。
「べ、別にやましいこと調べてたわけじゃ……!」
「ふーん?」
私は必死に弁解しながら、苦し紛れに言葉を探す。
「えっと……その、“初雪”を……!」
先生がぴたりと動きを止める。