第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」
「……なにしてんの、?」
「――っ!!??」
不意にかけられた声に、心臓が跳ね上がった。
慌ててスマホの画面を伏せて、振り返る。
そこには――
いつもの制服姿の先生が立っていた。
目隠しの奥から、不思議そうにこちらを見つめている。
「せ、先生っ……!? い、いや、えっと……べ、べつに……!」
思わず立ち上がって、手をバタバタさせる。
でも逆効果。
顔の熱が余計にこもって、頭まで真っ白になりそうだった。
(やばい、今の……見られてた!?)
「ん?」
先生は首をかしげて、ほんの少し近づいてくる。
「今、魔導出してた?」
「……えっ?」
先生の視線を追って、中庭の方を見る。
そこには、草の上に淡い光を帯びた白い花弁がいくつも、ふわりと舞っていた。
一瞬だけ空中に浮かんで、すっと消える。
また一枚、ひらりと落ちて、光になって溶けていく。
(わたし……今、力を……? ただスマホを見てただけなのに……)
戸惑いと、わけのわからない恥ずかしさで、胸がざわつく。
「なになに……中庭に花畑でも咲かせようとしてた?」
「え……?」
先生が笑いながら、私の隣まで歩いてくる。
黒い制服の袖が、すこしだけ手元をかすめた。