第39章 心は運命も本能も飛び越える✿保科宗四郎✿裏
隔離室に入り、ベッドに座って、上着の匂いを嗅いだ。戸惑いながらも自身の身体を撫でる。酷く濡れた場所に指を這わせると、すぐにその瞬間は来る。だが、何度絶頂を迎えようと、疼きが止むことはない。
どのくらいの間、そうしていたのかわからない。扉から声がかかり、その声に余計に甘く痺れてしまう。扉についた小さな窓からαが私を見ている。厭らしく乱れる私を。
「動けるか?」
窓の下の四角い板が浮き、彼の手が入ってくる。インナー、だろうか。
「僕が着とったやつ。使ってええで」
腕で鼻を押さえたまま私が受け取るのを待っている。慌てて立ち上がり、扉の小さな窓に顔を押し付けた。両手で腕を掴み、触れさせるように胸に寄せる。
「……あかんて。番になるんやったら、入るで」
「副隊長は、ほんとに……私でいいんですかっ!」
例え運命の番だとしても、相手が望まぬのなら、無理強いなんて出来ない。副隊長が本当に望んでいるとは思えないから。
だけど彼は、私の質問に答えなかった。
「ここに来れるんは僕だけや。なんかあったら、通信機で呼びぃ。ほな、僕は行くで」
軽く引かれる腕を必死に掴む。噛んで欲しい……だけど、私だけが求めるのは嫌だ。
「あんな、αは何人でも番に出来んねん。解消も出来んねん。一々番うことになんも思わんわ」
その番う条件すらも、なんとも思わないのですか?どうせ真面目なあなただから、番も1人だけで、結婚もしてくれるんじゃないんですか?解消なんて以ての外。相手にリスクがあることはしないでしょう?
「番……いるんですか?」
「おらん。……ほんまはめちゃくちゃ欲しいねん。運命に抗えるはずないやろ。君もはよ、僕のこと欲しいて言うてくれ」
力が抜けた手からスルスルと腕が離れていく。小さな窓に押し付けた唇に、ガラス越しに彼の唇が触れた。