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魅惑の恋【短編集】

第38章 いつも笑顔のあの人は…✿保科宗四郎✿


風の音と2つの足音。遠くで車や電車の音。どこかで流れている微かな音楽。色んな音が呼吸音に交じり、聞こえていた。

隣を走る副隊長はほとんど喋らない。あのお喋りな彼は、私といる時は業務的なことしか、その口を開くことはないと知っている。

「……なぁ。三浦って、僕とあんまいたくないん?」

「え、どうしてですか?」

「いっつも、おもろなさそうやなって……他の子はニコニコしとるんに……なんでかな思てな」

それはあなたじゃないですか。
もちろん、そんなことは言えなかった。
私って、そんなに楽しくなさそうに見えるのだろうか。だから副隊長も楽しくないのかな。

「申し訳ありません」

「なんで謝るん?……やっぱ、おもろなかった?
まあ、そうやろな。君の前やと、上手く言葉出てこんし」

副隊長は口元を隠し、目を逸らした。

なんの話をしているのだろう。副隊長なら、幾らでも相手を楽しませる話術を持っているだろうに。
ただ、私を楽しませる必要はないと思っていたのではないか。

少し寂しくなり、痛んだ胸を隠すように顔を逸らした。勝手に眉間に力が入る。

「どしたん?」

覗き込んできた副隊長から逃げるようにペースを落とし、距離を取る。すると副隊長もペースを落として、隣に並んだ。
この人を楽しませる術が見つからない。その動かない表情を崩したいのに。
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