第38章 いつも笑顔のあの人は…✿保科宗四郎✿
「……嘘や。上手く言葉が出てこんっちゅーのは、ちょいちゃう。
楽やねん。君といると、なんちゅーか……素の自分でおれる気ぃする」
その言葉に驚き、咄嗟に副隊長の目を見た。いつも無表情だった顔が、刀を握った時のような彼の姿に変わる。とても、真剣な表情をしていた。
「ほんまはもっと、仲良うなれてから言いたかったんやけどな。我慢出来ひん。
――僕の、大切な彼女なって」
足が止まる。何を言われたのか、すぐに理解は出来なかった。
夕日に染まる頬が2人の温度を上げる。副隊長も先程より、頬を染めて微笑んだ。
「……笑った……やっと、見れた。私だけの笑顔……」
「え?笑って欲しかったん?ははっ……好きな子ぉの前では、素でおりたかっただけなんや。許して?」
少し前で止まった副隊長が私に近付いてくる。
「君が纏う空気は気持ちええ。ずっと隣におってええ?」
背中からゆるゆると吹く風が私を押す。1歩前に踏み出せば、好きな人の胸の中だった。
「……プロポーズみたいですね。
私も、副隊長の隣にずっといたいです」
背中に回った手が痛いほど私を抱き締める。聞こえていた音は背景に溶けて、耳を擽る彼の息遣いだけが聞こえていた。
「……美影、結婚してくれるん?」
クスクスと笑う彼に、「はい」とだけ答えた。
こじ開けられた心から、想いが溢れ出す。これ以上の幸せがないくらいに、気持ちを伝え合った。
お互いの声は震えて、それでも温かくて……愛しさを抑えきれない。
――ずっと、私だけに、その笑顔を見せてください。
_____________....end.