第4章 1歩ずつ
千明side
「すみません!先に失礼します!お疲れ様です!」
バイトを早く切り上げ、お父様がまだ来ていないことを願いながら走って家に向かう。
帰りついた頃には汗だくで、服が肌にベタベタとまとわりつく。
「ただいま。」
久しぶりに入った家の中は酷く荒れていた。
元々家事を俺に任せっきりだった母は、相変わらず何もせずに過ごしているんだろう。
その家の現状に耐えられずゴミをまとめ台所を片付けた。
匂いの原因も取り除き、お父様に嫌な顔をされない程度に掃除をした。
ある程度掃除が済んだ所で玄関が開いた。
お父様だった。
前回も思ったが、いつの間に家の合鍵を手に入れたんだろうか。
「お父様、すぐお茶をお出しいたします。」
そんな俺の言葉を遮るように「いや、いい。」と断られてしまった。
「ここに長居するつもりはない。これ。」
そう言って俺に封筒を渡してきた。
前回同様、招待状のようだ。
俺は丁寧に両手で受け取る。
「次来なかったらわかってるな?」
「はい。次は必ず参加させていただきます。」
「……少し顔がマシになったかと期待していたが、変わってないな。」
「あ、えっと……」
「Ωのお前に期待するものは子供。それだけだ。せめて顔が良ければ良い種に出会える確率が上がる。違うか?」
「その通りです……」
ここで反抗すればまたお仕置をされてしまう。
痛いのは嫌だ。
正座して話を聞いていた俺は膝の上の拳を力強く握りしめる。
耐えるんだ。
これがΩで生まれてしまった俺の運命なんだ。
恋愛なんてしてはけない。
「ふん、当日は綺麗にしてこい。いいな?」
「はい。」
そのままお父様は家から出て行った。
母さんの事はもうどうでもいいんだろう。
一言も母さんのことは口にしなかった。
俺も実際、全く顔を合わせていない。
家がある程度片付いた所で俺は佐野の家に帰ることにした。