第4章 1歩ずつ
響也side
帰宅すると千明がいつものように台所で晩御飯を作っていた。
「あ、おかえり。もうすぐ出来るから着替えてこいよ。」
「あぁ。」
少しずつ前の日常に戻ってきている。
着替えを済ませ、席に着くと料理が並べられていた。
千明も席に着くと同時に俺は紙袋を取り出し、千明に渡す。
驚いた顔で「なにこれ」と受け取った千明は中身を見て両手くらいの小さい箱を取り出した。
「こういうのはあまり好きじゃないだろうが、万が一の為につけておく方がいいと思ってな。」
箱の中から出てきたのは黒い首輪。
首を噛まれないように防御するための物だ。
望まない番だって世の中には数え切れないほどいる。
その中に千明がいて欲しくないと思い、プレゼントすることにした。
「こんなの受け取れねぇよ。返す。」
「いいから。着けておけ。」
「でも高いだろ。嬉しいけど、俺はアンタの何者でもないし。」
「俺が好きだからだ。受け取ってくれ。」
「うっ……わかった……//」
渋々受け取り、「なら着けてくんない?」と俺にお願いしてきた。
首元に手を回し首輪を着ける。
「苦しくないか?」
「違和感はあるけど大丈夫。」
「パスワード式で着脱出来るようになってる。お前以外に外せないから安心しろ。パスワードは自分で決めろよ。」
「うん、ありがと。……佐野の誕生日っていつ?」
「8月17日だ。」
それを聞くとすぐにパスワードを設定しだした。
慌てて俺はそれを止める。
何を考えてるんだこいつ。
俺の前で設定したら意味がないだろ。
「お前何しようとしてんだ。」
「何って、パスワード。0817にしようかなって。」
「は?何言って」
「アンタにならいいかなって。特に好きな数字もないし。……それに信じてみたいからさ。」
そういうと再びパスワードを設定しだした。
ピピっと音が鳴ると、「よし、食べよ?」と食事を始めた。
俺がどれだけ我慢してるのか知らないのか。
今すぐにでもその首輪を外して番にできるんだぞ?
俺が動揺しているのも気にせず、千明は黙々とご飯を食べている。
「食べねぇの?」
と首を傾げる姿にそんなこと出来ないと自分に言い聞かせ、俺も食事を摂ることにした。