第31章 エルダーフラワーかローズか否か
椛(ほぉ〜、なるほど。)
香りを堪能すると、ドリアと共に運ばれて来た木製スプーンで、チーズ部分を突き、弾力を確認した。
椛(へぇ〜…)
ドリアには未だ口を付けずに、仕上がりを観察し続ける椛の様子を、カウンターの中から眺める安室。
『クスクス』と小さく笑いを堪えるような声が聞こえて、顔を上げると、困ったような少しはにかんだ笑顔を向けている安室と目が合った。
『何か?』とでも言うように椛は安室に向かって首を傾げる。
安室「いえ、なんだか今日はいつもにも増して審査されている様な気がして、不思議な気分ですよw
ふふふっ。」
椛(あれっ?
試食して欲しいって言って来たのは、零の方なのに…)
心の中で小さく悪態をつくが…
椛「??
そのつもりで来たのですが…
間違ってましたか?」
安室「いえいえ、是非ともよろしくお願いします♪」
そんな人に相談しなくても、安室が作る料理なら十分美味しだろうに。
けど、安室の気持ちも分からなくもない。
『これで出しても十分美味しいし、ダメではないが…』
仕事で、新しいレシピを作っている時も、何か引っかかって、誰かに相談したい時、誰かに背中を押してもらいたい時が椛にもある。