第31章 エルダーフラワーかローズか否か
椛(これは大変だな…
いつもこんな感じなのかな?
お客さん相手に、なまじ邪険にも出来ないだろうしな…)
要領が良い安室の事だ。
きっと上手くかわしているのだろうが…
そんな事を考えていると、良い香りと共に、取手のついた小さめのココット皿を2つトレイに乗せて、安室がカウンターから出てきた。
席に座る椛の隣に立つと、カウンターテーブルの上に2つとも乗せた。
椛(あれ?
今日は2つ?)
目の前には2つのココット皿。
パッと見、中身は同じドリアに見えたが、よく見ると使っているチーズが違うのか、それぞれ色と香りが異なった。
美味しそうな香りに思わず笑みが浮かぶ。
そのまま隣に立つ安室を見上げると、同じように笑みを浮かべて椛を見下ろしていた。
安室「熱いのでお気をつけください♪」コソコソ
それだけ告げると、カウンターの中に戻っていく安室。
カウンターの中に入る安室を見送ると、
再び目の前に置かれた2つのドリアに目を向ける。
『どちらが良いか、食べ比べてみてほしい』と言う事だろう。
頼まれている以上、しっかり役目を果たそうと、ドリアに顔を近づける。
先ずは、それぞれ香りの違いを確認した。