第31章 エルダーフラワーかローズか否か
テーブル席は広くて良いかもしれないが、飲食店に入る来る時はカウンター派の椛。
ふとした瞬間に、会話が始まるのはカウンター席ならではだ。
安室「お待たせ致しました。
紅茶をお先にどうぞ♪」
椛「ありがとうございます。」
カウンター越しに紅茶を受け取る。
グラスを吹き上げる作業をしている梓が、そんな2人の様子を微笑ましく見守っていたのも束の間…
女子高生1「安室さん〜!
この問題分からないです〜!
教えてください〜!」
穏やかな空気が流れていた雰囲気が一転。
奥のテーブル席から聞こえる、少し怒りを含んだようなその声に一瞬、梓がピリついた。
安室「今、料理中ですから。
もう少し自分で考えてみて下さい♪」
なんて事ないように返事を返す安室。
女子高生2「えぇっ〜!
安室さん〜!」
奥から呼ぶ女子高生二人組に、安室は笑みを一瞬飛ばして、カウンター内での作業を続ける。
目の前で見ていると、その笑みは営業スマイルの方だと分かるが、彼女達は判断できない。
そして、自分達以外の女と安室が話している現状が許せないのだろう。
その後も、諦めずに声をかけていたが…
いくら声をかけても、カウンターの中から全く出てこようとしない安室の様子に、
『今は何を言っても無理だ』
と女子高生達も流石に悟ったのか、ひとしきり言葉を放ち終わると、それ以上強く言ってくる事は無かった。