第31章 【贖罪の旅】
それから、クリス達は医務室と校庭に足を向けた。医務室では何人もの痛々しい怪我人を見たが、校庭ではもっと凄惨な現場に遭遇した。
クリスはジニーからルーピンが亡くなったと聞き、言葉も出ないくらいショックを受けたが、心のどこかで「やっぱり」と納得がいった。
先生は生徒を守るためなら、きっと平気で我が身を投げ出すような人だったから……。
そんなルーピン先生の傍らでは、傷だらけのシリウスがしゃがんで手を握っていた。そこに悲嘆の色はなく、あるのは親友の勇敢さを称える男の横顔だった。
ルーピン先生の死は受け入れられたが、フレッドが亡くなったと聞いた時は、頭の上に大きな岩が落ちて来たような気分だった。
フレッドの遺体の上で、火消ライターを何度もつけようとしているロンの姿を見ていることが出来ず、クリスは誰にも分からない様にそっと校庭を出た。
* * *
校庭を後にしたクリスは、ブナの木の植わった中庭に来た。あちこちに激しい戦闘の跡があったにも係わらず、このブナの木は奇跡的に無傷だった。
クリスはそっと優しくブナの木に触れると、その根元にしゃがみ込んだ。
5月の風が心地よく、クリスが爽やかに吹く風を浴びながら目を閉じていると、突然後ろから声がした。
「こんな所にいたんだね、クリス」
「なんだ、ハリーか。君も抜け出してきたのか?」
「……うん。皆が僕を見る目に耐えきれなくてね」
「そうか……」
そう言いながら、クリスはゆっくり昇りゆく太陽に目を向けた。ヴォルデモートとの決戦を終え、心の中は今までにないほど凪いでいる。そこでクリスはハリーに頼みごとを申し出た。
「なあハリー、君にお願いがあるんだ」
「何?」
「私を――殺してほしい」
クリスの声を優しく運ぶように、ふわりと初夏の風が吹いた。突然の申し出に呆然とするハリーに対して、クリスは言葉を続けた。
「私とヴォルデモートの魂は癒着している。つまり、いつか私が第二のヴォルデモートになる可能性が十分にある。その前に、私を殺してほしいんだ」
「本気かい?」
「ああ、君にしか出来ない頼み事だ」
恐らくヴォルデモートの魂を取り込んだ自分は、そう簡単には死ねないだろう。だがハリーなら何とかなるかもしれない。