第30章 【人ならざる者】
正直に言うと、クリスだって別段強い使命感や、尊い自己犠牲精神を抱いているわけではない。だが今の自分には、今の自分にしかできないことがある、それだけだ。
それを全うしようと、クリスはセドリックの暖かい手を思い出しながら、ベンチの下でうずくまるヴォルデモートを抱きしめた。
するとそのまま溶けて吸い込まれるように、ヴォルデモートの魂はクリスの体の中に消えていった。
「……おお!受け入れてくれるのか!?愛を知らないその不幸な魂を……愛されることも、愛することも知らなかった、いや、学ばせてやれなかった儂のたった1つの心残りを、受け入れてくれるのか!?」
それを見ていたダンブルドアは、滝のような涙を流した。涙を流しながら、ダンブルドアはクリスの手を取った。
この涙は嘘ではない。ただし、それだけではないという確信がクリスにはあった。
「ありがとう、君に託して正解だった。儂は今この時ほど、自分の選択を間違えずに済んだと思ったことはない」
「……あの銀磨きセット。あれは銀の腕輪を通して、先生との絆を深める為の手段だったんですね」
「小賢しい老人の最後の悪足掻きじゃ。恨んでくれてもかまわん」
恨めと言われても、そんな感情は浮かんでこなかった。あるのは流す涙さえ持たぬ干からびた哀愁と、この2人の奇妙な共通点だった。
頭が良く、魔術に優れ、才能があって、それでいて家族を愛すどころか、殺してしまった少年。
恐らくダンブルドアは救ってほしかったのだ、自分によく似た、トム・マールヴォロ・リドルという少年を。