第30章 【人ならざる者】
「目をつぶりながら僕の手を握ってて。大丈夫、必ず正しい場所に導いてあげるから」
「分かった。ありがとう、セドリック」
「そうだ、ダンスパーティーの時の事を覚えてる?」
「覚えてるけど……いきなりどうした?」
「君を誘った時、実は僕、本気だったんだよ」
セドリックがそう言った途端、突然つむじ風が吹いてクリスは反射的にギュッと目をつぶった。――と同時に、クリスは再び白い靄のかかったホグワーツ特急に乗っていた。相変わらず人気がなく、不安になるほど静かだ。
ほどなくしてホグワーツ特急が停まると、クリスはまた白いホームに出た。先ほどの階段続きのホームとは違い、キチンとしたプラットホームで、所々にベンチも見受けられる。
此処にはどんな仕掛けがあるのだろう。クリスが辺りを見回していると、前方からゆっくりとダンブルドア校長先生が歩いて来るのが見えた。
セドリックと会った後なので、ダンブルドアを見ても特に驚く様な事は無かった。むしろこの場を作ったのは、他でもないダンブルドア校長自身なんだろうとクリスは理解した。
「久しぶりじゃのう、ミス・グレイン」
「……先生も酷い人ですね、こうなる事なんて予想がついていたでしょうに」
「それを言われてしまうと、返す言葉もないのう」
ダンブルドアはその時、珍しく反省するように視線を下げた。
無言の時間が続く……。その時ふと、どこかから苦しむ赤ん坊の泣き声が聞こえて来た。
――あぁ、『あれ』か。と、直観したクリスは、反射的に冷たい視線を送った。
「先生、あれがヴォルデモートの本当の魂ですね?」
「ああ、さよう。沢山の人を殺し、自らの魂を傷つけ過ぎた結果、あのような姿になったのじゃ」
ヴォルデモートの魂は赤ん坊の様な姿をしていたが、まるで全身の皮を剥がされた様に真っ赤な皮膚をしていた。顔は皺々で、とても可愛いなどと口が裂けても言えない風貌をしている。さらにその泣き声は、聞いているだけで虫唾がはしった。
「愛情を知らない人間は、皆こうなってしまうのでしょうか?」
クリスの問いに、ダンブルドアは目を伏せて何も答えなかった。ややあって、クリスはもう一度ヴォルデモートの魂に目をやった。