第30章 【人ならざる者】
「 古より伝わりし血の盟約によって何時に命ず、出でよ
ケイオス!!」
ヴォルデモートが呪文を唱え終わると、ハリーは一瞬にして巨大な闇に飲み込まれた。そこは上もなく、下もない、まるで深くて暗い沼の底のような場所だった。
ハリーは咄嗟にロン達を見つけようと辺りを見回したが、何も見えないし、誰の声も聞こえない。
だが不思議なことに、ヴォルデモートの姿だけは認識できた。
「くくく、ははは……はぁーーっはっはっはっは!!!素晴らしい、混沌とした闇の監獄!お互いの命を懸けた決闘の場に相応しいではないか!!」
ハリーは暗闇の中、ヴォルデモートに向かって「エクスペリアームス」と大声で呪文を唱えた。
だがヴォルデモートは何の苦も無く盾の呪文でそれを無力化した。
(駄目だ、クリスを傷つけない様にすると、どうしても力が出せない!!こんな時、どうすればっ……!!)
ただ戦うだけならやりようもあるのだが、ヴォルデモートは今、クリスの肉体を乗っ取っている。安易にヴォルデモートを攻撃すると、それはそのままクリスの肉体に返ってしまうだろう。
満足に反撃も出来ない事を知りつつ、ヴォルデモートはハリーが僅かギリギリのところで避けられる様に死の呪文を連発した。
「ふはははははは!!どうしたポッター、まさかこの俺様を相手に手を抜いているのか?」
「クッ……クリス、クリス!クリスッ!!頼む、目を覚ましてくれ!!」
ハリーは暗闇の中で杖を握りしめると、一縷の望みを託してクリスに呼び掛けた――。