第29章 【帰らぬ人】
『我が名は闇の帝王ヴォルデモート。此度は外ならぬ宿敵、ハリー・ポッターと雌雄を決する為、はるばるホグワーツにやって来た。決闘の場所はホグワーツの大広間だ。もし10分以内に来ぬ場合は、我が全勢力をもってホグワーツを殲滅する!』
そう言い切ると、キーンとした耳鳴りと共にクリスの声も消えた。当然のごとく辺りがざわつき始め、皆の視線がハリーに集まる。それと同時にクリスの名前もあちこちから上がった。
「……どういう事?今のクリスの声よね?」
「ハーマイオニー、実は……クリスの体がヴォルデモートに乗っ取られたんだ」
「そんな!嘘でしょう!?だって乗っ取られたら、クィレルの時みたいに死に――」
「そこで君の知恵を借りに来たんだ!ハーマイオニー、クリスを助ける方法はあるかい!?」
いきなり無理難題を押し付けられ、ハーマイオニーはパニック寸前だった。
なんとか似たような症例を思い出し、解決の糸口を見つけようと今までに読んだ本の内容を思い返しても、何一つとして良い案が浮かばなかった。
当たり前だ、体を乗っ取られた人間を助ける都合の良い魔法なんて、どこにも存在して無いのだから。
――考えれば考えるほど、残り時間は短くなる。ハリーはスーッと深く息を吸い込むと、覚悟を決めたように背筋を正した。
「よし!じゃあ僕は行くよ。皆はここに残っててくれ」
「ふざけるなポッター、クリスが居るなら僕も行くぞ!」
「僕も行くよハリー!どんな時だって僕らは一緒だった。だろう!?」
「私も行くわ、クリスを救うために!」
「僕は……」
皆が大広間の決闘に向かおうとする中、ネビルだけは言葉を濁した。
何故か自信がなさそうに視線を泳がせ、まるで昔の気の弱いネビルに戻ってしまったかのようだった。