第28章 【美しき獣】
ロンとネビルの魔法は確かに直撃したが、ナギニには何のダメージを与えることも出来なかった。
あの出血量から考えると、ドラコはまさに息絶える寸前だろう。万が一にも……と、ロンの脳裏にクリスの泣き顔が浮かんだ。それを払しょくしようと、ロンは頭を振った。
正に絶体絶命の状況下で、何処からともなく美しい音色が聞こえてきた。ロンとネビルが、さらにはベラトリックスさえその不思議で美しい音色に聞き入り、それにより戦場の空気が変わった。
「……フォークスだ」
徐々に近づいてくる音色を聞きながら、ロンが呟いた。
2年生の時、フォークスの尾羽につかまって秘密の部屋の入口まで運んでもらったことは忘れられない記憶として残っている。
誰もがその姿に見入る中、フォークスは円を描く様に飛びながら、ボロボロの三角帽子のような物を落とした。さらに倒れているドラコに近づくと、深々と牙の跡が残る首に静かに涙をこぼし、再び空へと消えていった。
野生の本能から、ドラコが息を吹き返しつつあることを悟ったのだろう。ナギニは再びドラコを襲おうと迫ってきた。
だがそれに対し、ネビルがすかさずドラコとの間に入ると、自分の杖を横に構えて、ナギニの口の奥にかませた。
「くッ、このままじゃ……!!」
ナギニはその巨大な体から、杖共々ネビルを亡き者としようとしている。
力は拮抗、いや、僅かにナギニの方が勝っており、杖がみしみしと悲鳴を上げている。ネビルはロンの方を振り返ったが、ベラトリックスと交戦中でとても協力はあおげない。
このままやられてしまうのかっ!?……と、冷や汗が頬を伝ったその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。それは先ほどフォークスが落としたズタボロの三角帽子――組み分け帽子の声だった。
『力が必要かね?勇気ある者よ』
「うん!」
『宜しい、ならば我より剣を抜け。君にはその資格がある』
組み分け帽子が大きく口を開くと、奥底にキラリと光るものがあった。
ネビルは一か八か、自分の杖を犠牲に、ググッとナギニの口に押し込むと、横っ飛びに転がりながら組み分け帽子の口に手を突っ込んだ。
そして柄のような物に触れると、それを一気に引きぬくと同時に体を回転させ、襲い掛かってきたナギニを弧を描く様に一刀両断した。