第26章 事変
食堂に入ってきたのはシャツの持ち主である悟。
「伊地知から僕のシャツ預かって……どうしたの、恵」
「別に……」
明らかに怒っている伏黒だったけど、もう流石に我慢の限界だった。
最初に私が噴き出したせいで、野薔薇も虎杖もつられたように笑いだす。
「あはははは!!やっべ!まじでおもしろすぎ!!」
「めっちゃ巨乳じゃん!!腹いてえっ!!」
「オマエらな……」
「怒んなって伏黒」
「えー、なになに。なんでそんなに笑ってるの?」
爆笑する私達と一緒にニコニコと楽しそうに笑う悟。
自分のシャツが汚されてそれを隠蔽しているとも知らずに。
涙が出るほど笑った私達だったけど、その後ちゃんと悟に事情を話し頭を下げた。
そしたら「あー、気にしなくていいよ。安物だし」とか抜かした。
野薔薇も虎杖も口をぽかんと開けていて、そりゃそんな顔にもなるよなってどこか他人ごとのように思った。
その日の夜。
私は久しぶりにセーフハウスへと来ていた。
悟にお土産を渡したかったし、なによりお兄ちゃんとの約束の事もあったし。
ご飯を食べ終えてリビングで二人でくつろぎながら食後のコーヒーを飲んでいる時にそのことを話した。
もちろんお兄ちゃんの事は伏せて。
「ハロウィン?」
「うん、その日さ、任務とか何も無かったらさ……えっと……さ」
デートをしよう。
その一言が言えずに私は口ごもる。
えぇ……、なんでこんな簡単なことも言えないの。
初心な女じゃあるまいし……。