第26章 事変
運ばれてきたコーヒーを口に含み、一拍置いた私は俯いたままの夏油に声を掛けた。
「驚いたかい、私が生きていて」
その言葉に、彼女はゆっくりと顔をあげて「うん」と小さく頷く。
「そうだろうね。世間的には私は死んだことになっているから」
「……生きて、いたの?」
「ああ。奇跡的にね」
嘘だけどね。
この身体の持ち主夏油傑は死んだ。
遺体を乗っ取り操っているとも知らずに、彼女は私の言葉に耳を傾ける。
乙骨憂太との戦いに敗れた後、五条悟と鉢合わせし止めを刺された。
だけど詰めが甘かったのか、微量ながらに生存し非術師の老人に助けられ匿ってもらいながら治療をしてもらっていた。
疑いの眼差しで私を見る夏油。
そう簡単に騙すことはできないか……。
「私を、信じてはくれないんだね」
「そ、そんなこと……!!」
「は嘘が下手だね、昔から」
の頭に手を伸ばし触れる。
すると彼女の瞳から涙がいくつもこぼれた。
それが答えだ。
私は溢れそうになる笑みを必死に抑えた。
「お兄ちゃんが、生きててくれてよかった……!!」
「うん、私もまたに会えてうれしいよ」
「私との約束、覚えてる?」
「もちろん。私の事を殺してくれるんだろう?」
私を"本物"の夏油傑だと信じた夏油。
所詮そこまでの絆だったんだ。
見た目だけで、言葉一つだけで、簡単に騙される。
滑稽だよ。
可笑しくてしかたがない。