第25章 懐玉
2018年10月19日。
「五条先生」
「おい、悟。起きろ」
「先生も寝るんだな」
「当たり前でしょ。何言ってんのアンタ」
「五条先生!!」
聞きなれた声に意識が浮上する。
マスクを軽くずらし、目を開けるとそこには僕の可愛い生徒たちの顔が4つ、僕を覗き込んでいた。
「おっ、起きた」
「ちょっとその椅子高いヤツでしょ」
「見ただけでわかんの?」
「呼びつけといて居眠りしないでくださいよ」
いつの間にか寝ていたのか。
随分と懐かしい夢を見た。
夢から覚める時、懐かしい匂いがしたのはなんでだろう。
長らく焦がれたあの影は、今もまだこっちを向いていた。
流れる様に過ぎて行った毎日。
いつかあの絶望的だったあの日々は、思い出となって遠くから眺めることになるだろうかと考えていた。
考えていたことは現実になった。
絶望的で苦しくて悲しくて辛くて痛い青い時間。
そんな時間に戻りたいと思うのは、目の前の子供たちが笑っているからだろう。
僕にも間違いなく傑と笑っていた時間があったんだと教えてくれているように見えるから。
「何笑ってんスか」
「別に♡」
青春の中にいる彼らが、この時間をいつか懐かしく恋焦がれ思い出せる日が来ることを願って。
「なんの夢を見てたんだ?」
傑そっくりの瞳が僕を見つめる。
「泡沫の夢、だよ」
「はぁ?」
怪訝な顔をする彼女の頭を僕は優しく撫でた。