第25章 懐玉
俺に背中を向けて去ろうとする傑に術式を発動させようとした。
「殺したければ殺せ。それには意味がある」
だけど、できなかった。
だって傑は親友で、親友だから。
親友をこの手で殺せるほど、覚悟なんてなかった。
雑踏の中に消えていく親友を俺はただ見つめる事しかできなくて、どうしようもないこの感情をどこにぶつければいいのかも分からない。
「くそっ!!」
いくら叫んだところで、アイツが戻ってくることはなかった。
ふざけんじゃねえぞ、傑。
なんだよ、意味分かんねえよ。
もしあの時、自分の力に過信しないであの男を仕留めていれば。
もしあの時、オマエが殺しを決意した時、様子がおかしかった時、隣にいて異変に気付いて、オマエの話を聞いてやれば、俺が止めていれば。
俺達はまだ「最強」でいられたのか。
こんな「もしも」を考えている時点で、もう手遅れなのに。
それでも考えてしまう。
人にも自分にも本心を隠すのがお上手だな、傑クンよ。
オマエのその考え方は、本音は、一つもオマエのためになってねぇんじゃねえの?
つうか、悪人面してるけど、本当の悪人なら「親だけ特別というわけにはいかない」とかわけわかんねえ筋の通し方しねえわ。
善行も悪行もクソ真面目に尽くしやがって。
馬鹿か、ああそうだよ‼
傑はお馬鹿ちゃんなんだよ‼
……………。
立派な理想像を描けた自分が、夢そのものより愛おしいのか。
本当に、バカ野郎が。