第6章 じゅじゅさんぽ【Vol.1】
「あー……、死ぬなら首吊りは辞めといたほうがいいぞ」
「え……」
「頸動脈洞から圧迫箇所がずれると苦しんで意識を失うことになるぞ。まぁ、通常の首吊りだとそんなことはないけど。それに糞尿垂れ流しになるし、ベロも目ん玉も飛び出てみるも耐えない姿で発見されるぞ」
「く、詳しいね………」
「それでもいいなら首吊りでもいいと思うぞ」
とりあえず自殺のアドバイスはしてあげたけど……。
でも、人が死ぬところは見たくない。
「……なんで死のうと思ったんだ?」
気付いたらそう、言っていた。
どうしてそんなことを聞こうと思ったんだろう。
お兄ちゃんのことがあるからか。
【この世界では心の底から笑えなかった】
と、死に際にそう言っていた事を五条悟から聞いたことを思い出す。
お兄ちゃんは死にたくて死んだわけじゃないけど、何かしらの理由があって、死にたいと思うのならその理由を知りたいと思った。
「………」
「なんて?」
声が小さくて全然聞こえなかった。
もう一度聞き直せば、男は私を一度見て視線を反らした。
「死ぬのに、理由が必要?」
「は……?」
「生きることのほうが、理由、必要じゃない?」
反らしていた真っ黒い瞳がまっすぐに私を貫く。
「しんどいし、苦しいし、全然笑えないのに、生きていく意味なんて、ないでしょ」
【この世界では心の底から笑えなかった】
お兄ちゃんの言葉とリンクし、ガツンと脳が大きく揺れた。