第6章 じゅじゅさんぽ【Vol.1】
ある程度祓っただろうか。
鍵が少なくなってきた。
全部なくなる前に誰かと合流したいな。
スマホを取り出し、とりあえず禪院真希に電話を掛けようとしたその時。
視界の端っこに何かが映った。
自分でも驚くほどに、心臓が早くなる。
口から出そうだ。
心臓の音が耳元で騒ぐ中、私はゆっくりと視線をそちらへ向ける。
私の視界には、一人の男性が挙動不審気味にフラフラと歩いていた。
恰好からみるに、20歳前後。
その顔色は見るからに悪い。
自殺志願者、か。
放っておこうと思ったけど、脳裏に浮かぶ最悪な光景を想像し、おえってなった。
夢見悪い事したくないから、その男の後ろをついて歩く。
迷いなくどんどん奥へと進んでいく男。
待て待て待て。
そんな奥へ行くな、迷子になる。
「おい!!待てって」
「……」
「ちょ、待てって言ってんだろうが!!」
「…………」
どうやら今日という日は、私の声が届かない日らしい。
3G時代のスマホじゃねえんだから、回線くらいちゃんとしろや!!
足場の悪い地面を蹴って、そいつの肩をぐっと掴んだ。
「……え?」
「やっとこっちみた……。圏外じゃなくてよかった……」
「けん、がい……?」
「こっちの話だから気にすんな」
死んだ魚のような瞳は、どこまでも黒くどこまでも淀んでいる。
本当に死にたい人間って、こんな顔になるのか。
背筋がぞっとした。
「オマエ、ここで何してんだ?」
当たり障りのない質問を投げかけると、男はだんまりを決め込む。
伏せた瞳が小さく揺れているところを見ると、やっぱりそうなんだと理解できる。