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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第6章 じゅじゅさんぽ【Vol.1】






オマエが死んで悲しむ奴が絶対いる。
苦しい思いをする人間が必ずいる。
そんなありきたりな言葉は、コイツには届かない気がした。

「だったら、死ねばいいよ」

心ない言葉が音として出た。

「本当にそう思うなら、楽になりたいなら、今すぐに死ねばいい。私はもう引き留めない」
「…………」
「大好きな人がいたんだよ。本当に大事で、大好きな人が」
「……恋人?」
「ううん、お兄ちゃん」

見ず知らずの人間に私はなんでこんな話をしているんだろう。
助けてあげたい、というよりは置いて行かれる側の気持ちを知って欲しいと思ったのかもしれない。

「お兄ちゃんさえいれば、何もいらないって思ってたよ。そう思うくらいには本当に大好きだった。でも、生きていけちゃった。悲しくて寂しくて、涙が枯れるんじゃないかって思うくらい泣いたのに。あっさりと涙は引っ込むし、笑って生きてるし。お兄ちゃんがいなくなっても世界は何事もなく回ってて、なんかそれも寂しいし切ないし残酷だし。朝起きて寝てしまえば同じ日が延々と続いてて。……そう言うもんだよ。オマエが死んだって悲しむ奴はいるけど、それは最初だけ。あとはもう同じ日常。そこにオマエがいないだけで。人間てすぐに忘れるから。あの時流した涙と一緒に失った痛みと共に、その痛みすら忘れていくんだよ。……そうしないと、たぶん人間は生きていけないから」
「………一つ、聞いてもいい?」
「なに?」
「置いていく方と置いて行かれる方、どっちが苦しいんだろうね」
「……それは」

言葉を濁す男に、私はふっと笑みを見せた。
答えなんて分かんないよな。
だって私は置いていかれた側だし、オマエは置いていく側だし。
天秤にかけたとして、どっちに傾くかなんてそいつの気持ち次第じゃん。



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