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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第5章 特級






どこにも行くなって、どういうことだよ。
お前は私を通して何を見ているんだ。
後悔、しているのかお前も。
兄を救えなかったことを。

「……どこにも、行かないよ」
「へへ、よかった」

ふにゃりと、まるで子供のように笑う五条悟はまた寝息を立て始める。
ずきりと、傷んだ。
傷んだのは、心臓か、心か、はたまた自分自身か。

そんな風に言われたら、私はここから離れることができないだろうが。
置いていかれる苦しみを、悲しみを。
私もお前もよく知っているんだから。

似たような傷を私たちはただ、お互いになめ合っているだけだ。
それで満たされているだけの関係。

「だから嫌いなんだよ、お前のこと」

腕を掴む男の指を一本一本丁寧に優しく外す。
力のなくなった男の手は無防備に柔らかいシーツに沈む。

その指を自分の指と絡め、そしてするりと外す。

何を、やっているのだろうか。
この男の弱さを垣間見て絆されたか。
コイツの弱点は兄だ。
兄との思い出がこいつを強くもするし弱くもする。
夏油傑だけが五条悟の感情を乱す。

「……ばっかみたい」

その言葉は一体誰に向けてのものか。
兄か、男か、それとも私か。
もしかしたら全員かもしれない。

これ以上、何も考えたくない。
だから私は部屋を出て、リビングで朝が来るのをただ待った。

夜は、静かすぎて嫌いだ。
嫌いだ、嫌いだ、嫌い。
嫌いになりたい、嫌いでありたい、嫌いでなくてはいけない。

全部、嫌いになれたらいいのに。
そしたら、こんな風に苦しまなくて済むのに。

「……くそ」

小さく漏れた文句は、私自身へと。
ソファの上、膝を抱えその中に顔をうずめる。
そして、そのまま、私は朝を迎えた。




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