第5章 特級
「」
五条悟の声で目を覚ます。
ぼんやりする視界の中、五条悟のビー玉のような綺麗な空色の瞳が目に映って、視線を反らす。
「ここで寝たら風邪引くでしょ」
「うるさい」
「今日任務あるでしょ。僕もあるから途中まで一緒に行こうか」
「嫌だって言っても意味ないだろ」
「うん」
「じゃあ聞くなよ」
満面の笑みを零すこの男は昨日のことなど覚えていないだろう。
寝ぼけて私を兄だと勘違いしたことを。
いつもへらへらして軽率で適当なくせに。
「朝ごはんの準備するからお風呂でも入ったら」
「……うん」
「やけに素直だね。どうしたの?」
「別になんでもない」
「………何も言わないところ、傑とそっくりだ」
その言葉に私は男の顔を見た。
五条悟の顔はとても寂しそうで、悲しそうで。
私は震える唇を噛んだ。
「言わないとさすがの僕も何もわからないよ。傑の時もそうだった。何も言ってくれなくて、一人で抱えて一人で傷ついて一人で姿を消した。僕はさ、もう間違えたくないんだよね」
「……それは私が妹だからか」
「違う、ってはっきり言えればいいけれど。正直、7割はそう」
「あとの3割はなんだよ」
「僕の私情」
「………あっそ」
「何かあったなら言ってよ。お前まで僕の前からいなくなったら、さすがに泣いちゃう」
「お前が泣くとか、ちょっと見てみたいな」
くすくすと笑えば、五条悟は私の体を優しく抱きしめてきた。
まるでどこにも行かせないというように。