第26章 事変
この状況を作り出したのは、悟が手も足も出ないようにするためだ。
非術師がいる中で領域展開はできない。
あいつの"無量空処"を受けないのはアイツとアイツに触れているものだけ。
こんな人数は無理だし、何よりそんなことしたら廃人となってしまう。
それにもし、呪霊達だけを領域内に閉じ込められたとしても、"帳"がある。
"帳"と領域の間に挟まれたら圧死するだろう。
だからこんな面倒な"帳"を降ろしたのか。
悟に領域展開させないために。
随分と用意周到じゃないか。
悟は虎杖や私と違って非道さと冷酷さを持っている。
"ある程度"の犠牲は仕方がないと。
だけど今のこの現状はどうだ。
死者が増え続け生者も増え続ける。
"ある程度"の天秤が悟の中で機能しているんだろうか。
想定外だ。
悟の想定している"犠牲"は呪霊に殺される人間たちであって、"悟に殺される人間たち"ではない。
どうしよう、この状況をどうにか打開しなければ何もできずに終わってしまう。
悟を追い詰めるために随分と万全な対策を立てたもんだ……。
仲直り、するって言っていたくせに……。
また私に嘘ついたんだね、お兄ちゃん。
拳をぎゅっと握り締め、私は走り出した。
お兄ちゃんが一体何を考えているかなんて知らない。
だけど、私を騙して悟を殺そうとするのは許せない。
お兄ちゃんは私が見つけ出して殺す。
どこにお兄ちゃんがいるかは分からないけど、絶対にこの近くにいるはず。
こんな事をしているんだ。
近くでこの様子を見ているに違いない。