第26章 事変
その時、私の後方で大きいな音が響いた。
思わず振り向くと、悟のいた場所から煙が上がっている。
悟がそう簡単にやられるとは思っていないけど、不安が募った。
だがやはりそれは杞憂に終わる。
「悟……大丈夫か?」
私は一度あの男から身を引いた。
今も私が離れているのに攻撃をしてこないのを見ると、あまり乗り気ではないのかもしれない。
だから、悟の方に向かった。
「ん?ああ、全然平気。というか、呪詛師と組んでんだから、そう来るよね」
あっけらかんと笑う悟は簡単に説明してくれた。
いましがた2体の特級呪霊は「領域展延」と言うものを使った。
それはシン・陰流の簡易領域と同じもの。
本来の結界術として相手を閉じ込める「領域展開」を"箱"や"檻"とするなら「領域展延」は水。
「水……?」
「そう。自分だけを包む液体。領域を押し返す時の初動に近い感覚かな」
「それってつまり……」
必中効果は薄まるけど、術式を中和するということだろう。
いくら最強と言えど、その状態であれば攻撃は悟にも当たる。
不安になってしまった私の心を読み取ったのか、悟は優しく微笑んで私の頭を撫でた。
それだけで、ああ大丈夫だって安心してしまった。
転がる死体、目の前で起きている理解しがたい現象に、非術師たちは逃げ惑う。
「落ち着け」と言ったところで落ち着けるわけがない。
だから悪いけど、私達から―――悟から離れててくれないかな。