第26章 事変
頬にそっと触れる悟の長くて太い指。
その熱に私のクソみたいなどうしようもない不安はどろりと溶けて剥がれて落ちていく。
私は弱いから、こうやって誰かに支えてもらわないと自分の未来の決断すら一人じゃできない。
ポロポロと零れる涙は、ズルくて弱い私に向けられたもの。
口を開いては閉じて、開いては閉じて。
音として出てこない本音を悟はただ黙って待ってくれている。
その間にも零れ続ける涙。
すでに答えは出ているのに、自分の本当の気持ちを曝け出すのが下手くそで嫌になる。
大きく息を吸って吐いて。
震える声で、か細い声で、小さく漏らした。
「私は……悟と一緒に、いたい。ずっと悟に触れていたい、触れててほしい……」
「うん。じゃあ……僕と結婚しよう?」
耳をすませないと聞こえない私の小さな声は、ちゃんと悟に届いていたようだ。
悟の両手が頬を包み込み、静かにゆっくりと顔が近づいてくる。
そして触れるだけの優しいキスを零した。
リップ音と共に離れていく熱に寂しさを覚える。
濡れた瞳が青い瞳を映して、どちらともなくもう一度唇を重ねた。
悟の舌が優しい生き物のように私の舌を絡めとって、唇から身体全体に安心が広がっていく。
狂おしいほど愛おしい。
悟の首に腕を回して、私の腰を抱きしめて、長い間何度もキスを交わした。