【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
side 沙良
『ピーマン……面白い形。大きいね。
ナスも…全然虫に食われてなくて綺麗。オクラも凄いね、全部よく実ってる。』
「だろー?トマトもツヤツヤで自慢のトマトなんだ。
どっかの誰かさんは苦手みたいだけどなー…」
ニヤリと意地悪く笑う梅君。
『…っ……苦手というか…
丸のままのが得意じゃないだけで…
トマトケチャップとかトマトソースとか…カレーに入れるトマトとかは大丈夫だよ…』
「カレーにトマト入れんのか…?」
『うん。我が家はお母さん直伝のカレーがあってね…
トマトを刻んで入れるの。先ずはにんにくで豚肉を焼くところから始まるんだけど…』
へぇ…美味そうだな、と言いながら梅君は話を聞いてくれた。
野菜を素揚げした夏野菜カレーも好きだ。
「沙良…元気そうで良かったよ…」
目を細める梅君にドキリとした。
『梅君こそ…』
「ずっと気になってた…会わない間も。
後悔もしたし…もうあんな思いはごめんだな…」
くしゃっと、笑う梅君。
『蓬莱さんに…会いに行ってくれたの…?』
「…聞いたのか。」
『うん…ありがとう…』
「理由は…ゆっくり話すわ。
皆心配して、寂しそうにしてたぞ。」
『私も皆に会わない間…苦しかった。
何かが欠けてるみたいな感じがして、寂しかったよ。
だからまた皆にこうして当たり前に会えるのは…
凄く嬉しい。』
「十亀のお陰だな…」
『…うん。』
「そう言えば…十亀は?」
『…迎えに来てくれるよ。もうちょっとしたら。』
「そうか…
沙良…まだ伝えてない事があった。」
『………?』
そう言うと梅君は大きな手で、私の頭を撫でた。
「誕生日、おめでとうな。」
真っ直ぐな眼差しで私の目を見つめながらそう言ってくれた梅君。
『…ありがとう…ございます。』
「ははっ…何だよ改まって。」
『そんな事言ってもらえると…思わなくて…』
「誕生日の日…会えなかったからな。
いくつになったんだ?14才か?」
意地悪くニヤニヤとする梅君。
梅君とことはちゃんは、初めて会った日、私を中学生と勘違いしたのだ。
『っ…16才だしっ…』
「おっ…もう結婚できるのか。大人の女になったな。」